長野県上田市 中村正さん

長野県上田市 中村正さん

農業による悪循環

 長野県上田市で小麦、そば、稲の栽培をしている。穀物を栽培する以前は葉タバコを1.8ヘクタール作っていた。少々の油カスとほとんどは化学肥料に頼っていた。葉タバコは油虫との闘いである。農薬を散布すると、油虫は苦しまぎれに産卵する。産卵された油虫には農薬への耐性が出てくる。農薬が効かなくなる。さらに悪い事に、農薬という環境ホルモンでオスがメスになる。産卵の量がもの凄い勢いで増えていく。消毒する回数が目に見えて多くなっていった。

  それに、もう一つの農薬を使わざるを得なかった。植物成長調整剤。これはタバコの花をとめるものである。ある程度タバコの茎が成長すると、それ以上の成長は止める。成長を止めると、枝葉から花が咲いて成長を姶める。この花芽を止めなくてはいけない。それで農薬を使う。そうすると葉が充実していい品物ができる。葉タバコの採算は悪いものではなかった。収益は取れたと言ってもいいと恩う。
ところが、私の体に問題が起きた。消毒した後の体の調子が悪い。寝込んでしまう時もあった。消毒の翌日は仕事にならないくらい体調を崩すのである。農薬は体に悪いと聞いてはいたが、それが原因なのかと思い始めていた。

新しい作物への転換

 そんな折に、ホテルニュー才才タニの料理長と知り合いになった。知り合った場所は生産者の会合ではなかったと恩う。この料理長の話に衝撃を受げた。ある時、ホテルニュー才才タニで、日本有数の化学薬品メーカーの会合が開催された。その客席に料理を出したが、もっといいものを出せとクレームがついた。最高の物を持っていくと、さらにいい物を出せと言ってきたそうである。料理長はその贅沢さにあきれた後、ふざけるなと怒ってしまったのである。心がまったくない。こんな贅沢がどうしてできるのか。私はこの話を聞いて頭をハタかれた気がした。その金は農薬を生産者に売って得たものであると知ったからだ。なんという馬鹿な事をしていたのか。葉タバコの生産なんてやる意味がない。決心が付いた。やめよう。その話を農協にしたら頭が狂ったのかと言われた。狂ったのは私ではない。農薬メーカーだと言いたかったげれど、通じないのでやめた。

 葉タバコに変わる作物を考えた時、農薬はできるだけ使いたくなかった。穀類なら農薬を使わなくてもできると考えた。ちょうど減反の時期に重なり、小麦を転作する事にした。基本整備の後に作付けをしたものだから、道路も作りながらの悪戦苦闘である。ようやく収穫の時がきた。この時に大失敗をした。刈り遅れである。小麦を刈り遅れると穂発してしまう。案の定、品物は二束三文である。一俵なんと1000円である。どうしよう。まさにお先真っ暗である。売るのは馬鹿々々しい。そんな時、農協の利用部に顔を出した。製粉機を借りにいった。こんなタイミングってあるのかと思ったけれど、製粉機を一台処分するつもりだというのである。明日に取り壊すというのである。処分するなら私がもらうと申し出たら、5万円でいいというのである。機械を設置して粉引きを始めた。少しでも金になれぱという思いである。小麦は粉にしたけれど、そのままでは値が付かない。農協の直売所で小売をする事にした。全部は売り切れなかったけれど、一俵1000円以上のお金にはなった。残った粉は安く売り、さらに残った物で自家製の醤油をつくったりした。

  この製粉機は我が家の宝物・稼ぎ頭でもある。現在でも現役で活躍している。昔の機械だけれども、丈夫で壊れない。粉も思ったように引く事ができる。この時の経験から原材料は加工をして販売する事にした。粉にするだけでなく、麺にしたり、そぱを打ったり、大福餅にしたり、商品化して販売している。

 原料を製品化するまで手がけると、もっといい作物を作りたいと思うようになった。農薬や化学肥料を使わないというだけではダメだ。おいしくなくては消費者の支持は得られない。もっといい物を作りたいと思っている時に玄米アミノ酸との出会いがあった。

玄米アミノ酸が持っている力

 玄米アミノ酸を使い始めてから、一番長いほ場で4年になる。毎年良くなっていくのがわかる。最初は半信半疑だったけれど、お米から作っているとしたら、相性が悪いわけがないと思って使い始めたのである。

 最初、稲田に使ってみた。甲殼類、昆虫類、カエルなどの生き物がもの凄い勢いで増えていった。豊作虫、カブトエビ、ミジンコ、バツタ、イナゴ、クモ、カエル、糸ミミズ、それも一種類ではない。カエルだけでも数種類、青ガエル、シュレーゲル、トノサマガエル、タイコウチなどなどである。カブトエピが脱皮をするので、稲田の水は濁っている。

 とにかく周りの稲田との様子がまったく違う。水を取り込むみな口にたくさんのミジンコや豊作エビが集まつてくる。これを見た小学生が大歓声をあげている。大ハシャギしている。

  土壌の膨軟性もすごい。たぶん相当の微生物が繁殖しているのだろうと思う。稲は密植ではなく粗殖しているが、茎の太さも目を見張る。それに根毛。太くて長い。これこそが自然のカであると実感する。その結果、平成15年、東京の大手消費者団体で食味値が一位という栄誉をいただく事になった。

  小麦の畑にも玄米アミノ酸を使っている。輪換農法といって、稲2年〜3年、その後畑にする。それからまた稲田にする。昔から行われている農法だが、小麦はこれをやっている。自作地だけでは間に合わず、借地して小麦を栽培している。2年ぐらい小麦を作った後に持ち主に返還する。そのほ場では米を栽培する。私が小麦を作った後にとれるお米がうまいと言われ始めた。実は借地で小麦を作るというのは心よく思われていない。小麦なんか作りやがってと思っている人も少なくなかったのである。それが変化した。明らかに違いがわかるらしい。土壌が改良されたからだと思っている。玄米アミノ酸が持っているカだと言ってもいいのではないだろうか。

 製粉した小麦は直売もしている。広島のお客様からは「この小麦を使い始めたら離れられない」という、うれしい便りもいただいている。身土不二という言葉があるように、外国産の小麦より、国産がいいに決まっている。外国産は長旅をしてきてエネルギーがなくなっている。それに何度も消箒してクタクタになってしまっている。

  そばの畑にも玄米アミノ酸を使っている。そばは排水が命で、水はけが悪いと作物ができない。玄米アミノ酸を使ってからの一番の違いは茅出しである。種をまいて、茅出しするとバラツキが出るのが普通なのだが、それがない。均一に出る。香りもよくなった気がする。月夜の晩に一斉にそばの花が咲くが、その光景は息を飲むほどの美しさがある。

玄米アミノ酸を使って作物が変わった

 玄米アミノ酸との出会いによって、いい素材作りは大きな成果を得る事ができた。化学肥料は使わない。農薬を使わないという目的も達成された。目的が達成されてみるとまた新しい感動が生まれてくる。米の花って知っていますか。お盆前後の早朝の開花後、ほ場に行くと香ばしい香りがする。刈り取り後の切り株。これもいい香りがする。土の香りもいい。小麦を作っても、そばを作っても、それぞれが楽しめる。農薬なんて使うものではないと改めて思ってしまう。自然に作るから自然の香りが出てくるのである。よけいな事をしたのでは何も味わえない。それだけではない。川上にいる生産者として、川下で生活している人に負担をかけたくないという思いがある。自然な栽培をする事でこれが実現できる。発芽玄米も作っているが、その排液ですら無駄にする事なく稲田に入れている。

  穀物の栽培生産から商品化、さらにその商品の販売まで一貫生産をしている。一貫生産は最後まで責任をまっとうするという事である。それでこそ安心、安全は実証できるのではないだろうか。

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